推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
航太は穂香に背を向けて、自分の席に荷物を置きながら小さな声で言う。


航太「別に一緒に行きたい奴がいるわけでもないし……」


穂香は航太の背中をに向かって、もう一度話しかけた。


穂香「でもこれ高いんだよ?せっかく貰ったんだから……えっ?何?亜美?」


そこまで言った所で、亜美がクスッと笑った後、後ろから穂香の肩を叩いて耳打ちした。


亜美「あのね……遊園地のチケットを誰かに貰う事なんてないんだよ……?」


穂香「えっ?じゃ、じゃあなん…んぐぅ……」


亜美が航太に気を使って、ヒソヒソと話しているのに、穂香が航太にも聞こえるような声で言うので、亜美は穂香の口を手で塞いだ。


すると航太が、その場から離れていく。


航太「ちょっとトイレに行ってくる……」


亜美は穂香の机に座って話し始めた。


亜美「本当に鈍感だねぇ……。
穂香と一緒に行きたいから買ったに決まってんじゃん。
わざわざ穂香の為に、高いチケットを買ったから一緒に行かない?なんて言われたら嫌じゃない?」


穂香は航太の言葉の意味を知って、たちまち顔を真っ赤にしていく。


穂香(私とデートしたいっていうことだったのっ!?デートなんてしたことないんだがーーーっ!!
どうして可愛く返事してあげられなかったんだろ。私のバカーーっ)


亜美は混乱している穂香の目を見つめる。


亜美「それでどうするの?行くの?行かないの?」


穂香「えっ?初デートって大切だよね?何を着ていけばいいのかわかんないよぉ……」


亜美は呆れたように頭を掻く。


亜美「意識し過ぎじゃない?だって毎日学校で会ってるんだし。きっとどんな格好でもいいと思うよ?」


同じクラスの男子と初デート。
第一印象が大事なんて事はないのに。



< 47 / 100 >

この作品をシェア

pagetop