推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
○ホテルの屋上にある展望台


ホテルの屋上から360度の夜景が見渡せる広い展望台に、数人の男女がいる。
穂香には全員が恋人のように見えた。


穂香(リュウさーん……少し場違いなので帰りませんか~。みんな腕を組んだり、肩を組んだりイチャイチャしすぎ……こっちが恥ずかしいよぉ……)


今にも口に出しそうになるが、リュウがご馳走してくれて、展望台の入場料を払ってくれているので、とても言える状況ではない。


リュウ「ここ綺麗だろ?穂香ちゃんが楽しんでくれたらいいな?って思って」


穂香「ありがとうございます。凄く綺麗です」


屋上の柵に並んで立つと、リュウが言った。


リュウ「Kとは連絡取ってるの?」


穂香「いえ……個人的な連絡先知らないんですよ。
K様のSNSのフォローも外しちゃって……
やっぱり知ってると、匂わせてしまったり、他の人との会話を見てるとヤキモチ妬いちゃったりするし……」



リュウ「そうなんだ?アイツも酷いなぁ……穂香ちゃんみたいに可愛い子を放っておいたりして……」


穂香はリュウの言葉に一瞬、同調しそうになった。


穂香(観覧車の中で好きって言ってくれたのに、放っておくってどういうこと?連絡先も教えてくれないって何?)


愚痴の一言でも言いたいが、少し考えると冷静になって言った。


穂香「航太くんは海外で頑張ってるんだから、仕方ないですよ。航太くんの夢が叶うのを待つって決めたんです」


穂香が少し寂しそうな表情をすると、リュウが肩に手を回してくる。


穂香「えっ……?」


驚いた穂香がリュウの横顔を見ると、心配そうに見てくる。


リュウ「そういう寂しそうな顔を見たくないから、喜んでもらおうって連れてきたのに。やっぱり寂しいんだ?」


図星だった。


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