結婚しないために婚約したのに、契約相手に懐かれた件について。〜契約満了後は速やかに婚約破棄願います〜
 ノックすれば聞き慣れた声でどうぞ〜と言われドアを開けたルキは、

「で、ベル。君は今度は何をする気なんだろうか?」

 部屋一面に広げられた様々な衣装とその中の1着を纏ったベルを見て楽しそうにそう聞いた。

「え!? 見て分かりません? コスプレ中ですけど何か?」

 ばばーんっと効果音をつけてドヤ顔でベルが見せてきたのは『なりたい自分を探してみよう!』と銘打った展示会の企画案。

「前クロネコ商会からバニー出した時好評で反響あったので、可愛い系コス企画立ててみました」

 ベルが来ているのは東の方にある国の民族衣装でスリットがガッツリ入っており背中も空いている綺麗なお姉様向けの衣装だ。

「まぁ、これらは売り物じゃなくて、世界にはいろんな服があるんだよって見て触ってなんなら着てみて体感してほしいなってイベントで、売りたいのはこっち。コルセットなしでも綺麗に見せる新作ドレスです」

 じゃんっとベルがルキに見せたドレスは様々なデザインがあったがどれもコルセットなしで着る事を前提としたものらしい。

「キッツイのよコルセット。もうヤダ。本当ヤダ。公爵夫人辞めたくなるくらいヤダ」

 ドレス自体は好きだが、こうも毎日締め上げられてはたまらないとベルは顔を顰める。

「そこは辞めないで欲しい。切実に」

 本当に辞めかねない勢いでベルが訴えるのでルキは割とガチめなトーンで懇願した。

「そもそも、結婚と同時に爵位継ぐなんて聞いてなかった」

 いつかはそうなるんだと思っていたけれど、いきなり公爵夫人だなんて詐欺だと未だにベルは不服そうに口を尖らせる。

「先の災害で管理責任問われちゃったからね。仕方ない、諦めて」

 結婚と同時に公爵位を継ぐ事になったルキは多忙な生活を送っているが、外交省での仕事もあるため領地経営自体は祖父と父を中心に多くの使用人を雇い、最終責任者として管理体制のチェックをしたり視察に出向く形で携わっている。

「だから辞めなくて済むように脱コルセット文化を目指してるんじゃない。もう少し身体によくて可愛い下着とコルセットなしで着られるドレスがあればいいと思うのよ」

 そんなわけでこの企画ですとルキに楽しげに報告する。

「まぁ、確かに無理しないのが一番だよね」

「でしょ? そんなわけでガッツリ稼ぐぞー」

 とやる気満々なベルはアクアマリンの瞳を輝かせた。

「コンセプトはいいと思うんだけど。ベルは会場でコレ着る気じゃないよね?」

「どれ着ようかなーって迷ってはいるんだけど、コレ可愛くない?」

「ダメ、絶対反対。露出多すぎ」

 そう反対したルキはベルを引き寄せるとぎゅっと後ろから抱きしめて首筋に顔を埋める。

「……ルキ?」

「ベルはもう少し自分が可愛いんだって自覚した方がいいと思う」

「いやいやいやいや、シル様とかルキならともかく私別にそんなに元がいいわけでも」

 そう言いかけたベルのうなじにルキはちゅと音を立てキスを落とす。

「ちょ、ルキ、何やって!?」

「外で着れないように実力行使」

 ルキがそう言うと同時にベルに甘い痛みが走る。

「ん、きれいについた」

 満足気にそう言って紅く色づいたベルの首筋を見たルキは、そのままわざと音を立てながらベルの背中にキスを落としていく。

「ん、あっ……ルキ、ダメって」

「こんな格好してるベルが悪い。ベル背中弱いし」

 ルキは楽しげに少し意地悪くそう言って指と舌を這わせる。

「……ん……や、ダメ、この服やめるからっ」

 力が抜けてルキにもたれかかり涙目で訴えるベルの髪を撫でて、

「ベル可愛い。俺に見せるためなら着てくれてもいいよ?」

 とルキは満足気に笑う。

「さて、と。続きはあとにするとして、着替えてごはんに行きますか」

 シルヴィアが待ってるよと動じないルキに、勝ち気なアクアマリンの瞳は少し悔しそうな色を浮かべる。

 このままじゃ一方的にルキに負けたみたいで悔しいとルキの腕を引いたベルは自分からルキの唇に自分のそれを重ねる。

「ふふ、言ってなかったわ。おかえりなさい、私の可愛い旦那様」

 紅く染まった顔と驚いた色を浮かべる濃紺の瞳を満足気に見つめたベルは、とても幸せそうに笑ってそう言ったのだった。

ーーFin

本編はこれで終わりです。
このあとは2人のその後のお話しを番外編として投稿しているので、ご興味ありましたらお付き合いくださると嬉しいです。
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