侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます
 その夜も、侯爵は深夜遅く戻って来た。

 主寝室との扉の隙間から漏れる明かりを、寝台の中からボーッと眺めている内に眠りに落ちた。

 彼の好きなレディは、どんな女性(ひと)なのだろうと考えながら。

 翌朝、朝食後にさっそくアールと王立公園に向かった。

 執事のバートに道順を尋ねると、彼は日に焼けて健康そうな顔に茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべた。

 彼は屋敷の門の前まで行くと、東の方角を指さした。

「この道をしばらくまっすぐ歩くと、目の前に現れます。絶対に見落とすことはありません」

 世間知らずのわたしでも、それなら問題はない。

 彼にお礼を言うと、アールのリードをしっかり握って歩き始めた。
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