侯爵閣下。私たちの白い結婚には妥協や歩み寄りはいっさいないのですね。それでしたら、あなた同様私も好きなようにさせていただきます

掃きだめの街

 酒場というのかしら? それともバー? 一軒一軒、さりげなく視線を走らせると、どこもお酒を提供しているらしく、お客さんは葡萄酒や麦酒を飲んで盛り上がっているみたい。かといって店の端っこの方で一人寂しく飲んでいる人もいる。

 食べ物と酒精のきついにおいが鼻にまとわりつく。

 こんなにおい、王宮で嗅いだことがないわ。

 見たことのない光景は、刺激的というよりかは怖ろしくさえ感じる。

 老婆に教えてもらった緑色の看板の飲み屋の前にやって来た。

 通りに面したガラス窓をのぞきこむと、何人かの客がケンカをしているみたい。開きっぱなしになっている木製の扉から、怒鳴り声がきこえてくる。

 その酒場の横手に建物のエントランスがあり、その奥には上階へと続くであろう階段がある。

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