婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。

5.義弟の真実 side.皇輝



「初めまして、中村(なかむら)妃乃です。
よろしくお願いします」


妃乃に出会ったのは高校生の時。
親の再婚が決まって初めての顔合わせ、少し緊張した面持ちで俺と親父の目をしっかりと見つめ、挨拶した。

ぶっちゃけ妃乃の第一印象は、「なんだこの女」だった。


「妃乃ちゃんは皇輝と同じ高校なんだよね」
「そうなんですけど…ごめんなさい、私皇輝くんのこと知らなくて」


同じ高校、同じ学年、しかも女子のくせに俺のことを知らなかった。

あの天王寺グループの御曹司である俺のことを。
自分で言うが、女にモテ続けてきた人生で事実、俺と仲良くなりたがる女子はごまんといた。

なのに、俺のことを知らない女がいたとは――……。
知らない女に騒がれるのは好きじゃない。
でも何も思われないのも、なんか気に入らない。


「よろしくね、皇輝くん。私4月生まれなんだけど、皇輝くんは?」
「2月」
「じゃあ私の方がお姉ちゃんだね。良かったらお姉ちゃんって呼んでね」
「呼ばねえよ。学年同じじゃん」
「あは、それもそっか。じゃあ皇輝って呼ぶね」


何故か楽しそうに笑っていて、変な奴だと思った。
明るくて親父とも積極的に会話し、仲良くなろうとしているのがわかった。

新しい父親が天王寺グループ社長だと知らなかったらしいけど、天王寺の規模を知ったらどうせこいつも他の女みたいに、目の色変えるんだろ。

そう思っていたけど、豪邸に最初こそ驚いていたけど、特に何も変わらなかった。


「ちょっと妃乃!そんな格好でダラダラして!」
「だって落ち着くんだもん」
「ははは、いいんだよ。ここはもう妃乃ちゃんの家なんだからね」
「ありがとう、お父さん!」


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