紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
再会は突然に、強烈に

 あの最悪な夜からもうすぐ三ヶ月が経とうとしている。

 季節は四月上旬。

 寒かった冬の季節を耐え抜いて我こそはと競い合うように咲き誇る桜の木々がコンクリートで埋め尽くされている、無機質な都会の街並みに春らしい彩りを添えている。

 時節がら人でごった返している満員電車には、真新しい制服に身を包んだ新入生や着慣れないスーツ姿の新入社員と思われる人たちの姿がちらほらと見受けられる。

 そのせいか自分も他の人の目に同じように映っているのだろうか。穂乃香の頭にふとそんな考えが過る。

 ーーそんな訳ないか。もう二十七なんだし。きっと人生に疲れたアラサーに見えてるんだろうな。そりゃ、弟にも心配される訳よね。

 続いて脳裏に蘇ってきたのは、昨夜年の離れた大学二年生の弟・樹《いつき》と無料通話アプリで交わしたやり取りだ。

『姉貴、本当に大丈夫なんだよな?』
「もう、樹ってばしつこい。さっきから大丈夫って何度もいってるでしょ。学費のことはお姉ちゃんに任せて、あんたは勉学に励んでなさい。わかった?」

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