紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?

 ーー私の匂いが好みって、どういう意味? 今夜一晩だけって事は、つまり……。

 酔い潰れた穂乃香をこのホテルに連れ込んだのも、身体が目当てだったに違いない。

 酔っていたはずの頭が瞬時に覚醒し導き出した答えに、真っ青になった穂乃香はすっくと立ち上がる。そうして男の前を素通りして部屋から立ち去ろうとして、突然目の前がぐにゃりと歪んだ。

 ーーあっ、ヤバい!

 そう思った時には、バーでの二の舞を演じる羽目になってしまっていた。

 結果として、穂乃香が今度こそ目を覚ました頃には、外が白みかけていて、隣には水も滴るいい男から変態へと格下げした、裸の男の姿があり、記憶がないながらも昨夜の出来事が夢ではなかったと思い知った、のも束の間。

 穂乃香は自分が何も身に纏っていない事実にショックを隠しきれぬまま、ベッドの下に散らばった服を掻き集め、素早く着替えると逃げるようにしてホテルを後にした。

 エントランスでちょうどいい具合にたった今宿泊客が降車したばかりのタクシーへと乗り込んだ。

 運転手に行き先を告げてシートに深く身を沈めた穂乃香は、二日酔いで痛む頭と沈んでしまいそうになる気持ちとを少しでも紛らわすために手でこめかみを押さえ瞼を閉ざす。

 そうしてもう二度と男なんて絶対に信用してなるものかと心に固く誓ったのだった。
< 11 / 252 >

この作品をシェア

pagetop