フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
こんな豪華な船になど乗った経験など一度もないのだ。無理もないことだと思う。そのうえ貸し切りだなんて次元が違いすぎる。
ハッとした穂乃香は自身の身なりが気になり、全身を見下ろして見る。
今日はドレス選びがメインだったので、着脱しやすいカジュアルなアプリコットのシャツワンピースをチョイスしていた。
奏に恥をかかせぬようにと、足元に上品なプリーツが施されているものにしてはいるが、普段着に毛の生えたような装いだ。
「あの、服とか大丈夫なんでしょうか? ドレスコードとか」
慌てる穂乃香に対して、リネンの白いシャツにグレーのセットアップを合わせたラフな装いの奏は、絵に描いたような爽やかさを醸し出している。
まるでメンズ雑誌からそのまま抜け出したかのように。
奏の服装からも察しがつくというのに、余裕のない穂乃香はまるで気づいてなどいない。
いつになくおどおどしている穂乃香のことを殊の外愛おしそうに見遣った奏は、穂乃香の手をぐっと引き寄せ耳元に甘い美声を落とす。
「安心しろ。俺の目には世界一綺麗に映っているからなんの問題もない。ほら行くぞ」
ほんのり艶を孕んだ甘い声音に聞き惚れつつも、余裕そうな奏の様子がなんだか面白くない。
女性のエスコートに慣れているのだろう奏の洗練されたスマートな言動に、過去の女性の影がチラついたのもあるが、自分だけがドキドキさせられてばかりだと思ったからだ。