フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
意図せず穂乃香は、端正な奏の相貌をムッとした表情で見つめ返すのだった。
「どうした? 今度は拗ねてるのか?」
「べ、別に、拗ねてなんか」
くすっと優美な微笑を零した奏からの問い掛けがますます面白くなくて、穂乃香は素直じゃない言葉しか返せない。
これでは、「拗ねてます」と応えたも同然だ。
おそらくそれらを察したのであろう奏は、次の瞬間、想像もしなかった行動に出た。
「だったら、可愛い奥さんの機嫌をとらないといけないな」
相変わらず楽しそうに穂乃香を見遣った奏は、あろうことか、穂乃香の腰を浚ってひょいと姫抱きにしたのだ。
「キャッ……!? ちょ、やだ。下ろしてくださいっ!」
「嫌だ。今夜は俺たちにとって特別な夜にするつもりだから、その余興だと思って諦めてくれ」
当然、恥ずかしくて堪らないので穂乃香は即座に下ろしてもらおうと訴えるも、奏はもっともらしい台詞を口にし意味ありげに微笑むだけで聞き入れてなどくれなかった。
スタッフににこやかな笑顔で出迎えられるなか、これ以上にないほどの羞恥と格闘しつつ、穂乃香は奏に姫抱きにされて、船上のレストラン内に足を踏み入れることと相成ったのである。
そこは船というより、ラグジュアリーホテルを彷彿とさせる、豪奢な作りとなっていた。