フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

 そんな特別な相手である奏が、自分のために家族を捨てようとしている。

 ――そんなこと絶対にさせちゃいけない。なんとしてでも阻止しなければ。

 穂乃香は決意を新たに、奏に向けて真っ直ぐに声を放った。

「奏さんがあのルールをなくすために、家を出る準備を進めていると聞きました」

 奏は嘆息してから溜息交じりにボソボソと呟きを零す。

「あれほど穂乃香には言うなと言っておいたのに、余計なことを……」

 その様子から、柳本の話が事実であるのだと確信した。けれど訊き返さずにはいられなかった。

 なんとか思い直してもらわなくては、そう思ったのだ。

「あの、本当に家を出るつもりなんですか?」
「ああ、そのつもりだ」
「そんな……!」

 だが仕事上で何度も目の当たりにしてきた、他者を圧倒する泰然とした奏の揺るぎのない決然とした重低音の声音を耳にしたことで、奏の中では決定事項なのだと思い知る。

 おそらく穂乃香が何か言ったところで、聞き入れてなどくれないだろう。

 そう悟った穂乃香が落胆しているところに、再び奏からいつもの穏やかなバリトンボイスが響き渡った。
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