フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

「誤解しないでもらいたい。家を出るのは穂乃香のためというより自分のためなんだ。その件についてはあとで説明する。その前に穂乃香に話さないといけないことがある」

 甘やかな声音とは裏腹に、端正な相貌には真剣な色を湛えている。

 途端に緊張感に苛まれた穂乃香は顎を引いて答えるのがやっとだった。

 先ほどまでロマンチックな雰囲気が漂っていた船内には、重苦しい空気が漂っている。そんな中奏が重い口を開いた。

「まずは、穂乃香に謝らないといけない」

 けれど唐突にそう言われても、何のことだかさっぱりわからない。穂乃香は首を傾げるしかなかった。

 そこに放たれた奏からの思いがけない言葉によって、穂乃香は驚愕することとなる。

「実は穂乃香の叔母である雪さんからの依頼という体にして、代理人を介し、元婚約者に式場のキャンセル料の全額とは別に、慰謝料という名目で五百万を請求し回収している。樹くんの奨学金にはそれを充てた。つまり、俺は弁護士に依頼した金額しか負担していないことになる。そしてこれが残金だ」

 もはや理解が追いつかない。穂乃香の頭は大混乱を極めていた。

 奏から眼前に通帳をすっと差し出されても、それを凝視することしかできないでいる。
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