フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
そこまで思い至った穂乃香はハッとする。
奏は『今夜は俺たちにとって特別な夜にするつもりだ』と言っていた。
今夜が夫婦でいられる最後の日になるかもしれない、と覚悟を決めていたに違いない。
奏の気持ちを想像しただけで、胸が鋭い痛みに苛まれ目元までが熱くなってくる。
けれども泣いている場合ではない。
穂乃香が奏への恩を感じなくていいようにすべてを明かし、誠意を尽くしてくれているのだ。それにキチンと応えなければいけない。
穂乃香は未だ不安げにこちらの様子を窺っている奏に向けて、これまで言えずにいた思いの丈を包み隠さず紡ぎ出すのだった。
「何もかも全部、夫である奏さんにお任せします。奏さんの優しさに縋ったあの夜自覚していたのに、勇気がなくて言えなかっただけで、奏さんのことで頭がいっぱいなんです。元婚約者のことなんて忘れてたくらいです。それくらい奏さんのことが好きです。愛してます。だから離婚なんて絶対にしません。一生側にいさせてください」
こんなにも誰かを想い、側にいたいと望んだのも、穂乃香にとって生まれて初めてのことだ。