紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
蜜月なのに

 翌朝、穂乃香が目覚めた頃には、とっくに朝を通り越して昼食時を迎えつつあった。

 宿泊したスイートルームは上層階のため、広く大きな窓の外にはオーシャンビューの絶景が広がっているに違いない。

 窓からは陽気な日差しが燦々と降り注いでいる。今日も天候に恵まれて、昨夜の夜景とはまた違った、さぞかし美しい眺めが楽しめるのだろう。

 あいにく今の穂乃香には、窓の側まで行きその絶景を優雅に眺めるような気力などない。

 それもそのはず。穂乃香と奏にとって、昨夜は正真正銘の夫婦となった特別な夜となった。そして奏からの宣言通り、精も根も尽きるまでとろとろに愛し尽くされてしまったのだから。

 目覚めた瞬間、穂乃香は尋常ではない疲労感と倦怠感に見舞われた。頭も蕩けているのか、いまだにぼんやりとしている。

 まさに夢現状態。

 それを体感することとなったのである。

 なにより、気怠くて起き上がる気力さえないのだ。悠長に美しい景色を堪能するような余裕などあろうはずもない。

 目覚めたばかりで覚束ないながらも、ぼーっと窓辺に視線を漂わせていた穂乃香の身体に、マットレスがたわむ微かな振動が伝わってくる。
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