紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?
 事の経緯を聞き終えた穂乃香が、自分のせいで奏を危険な目に遭わせてしまったのを謝罪するも、奏は「そんな必要はない」と取り合ってはくれなかった。

 まさか犯罪にまで手を染めるとは思わなかったらしいが……。

「バカなことをしでかしてくれたおかげで、手間が省けたから気に病むことはない。それよりも、新婚早々、可愛い新妻である穂乃香と十日も離れていたんだから、穂乃香のことを補充させてほしい」

 愛おしい旦那様である奏にふわりと抱きしめられて、あの魅惑のバリトンボイスで甘えるように強請られてしまっては、穂乃香に抗う術などない。

 穂乃香とて同じ想いでいるのだ。元より抗うつもりもないのだが……。恥ずかしいものは恥ずかしいのだから仕方ない。

 穂乃香は恥じらいつつも奏にすべてを委ねるために、そうっと瞼を閉ざした。

 以前から気づいてはいたが、奏の醸し出す香りとこのバリトンボイスにどうにも穂乃香は弱いらしい。

 それはきっと、ふたりが遺伝子レベルで惹かれ合った、唯一無二の存在である証に違いない。

 ーーということは、奏さんとの出会いは運命だったのかなぁ。うん、きっとそう。だからこんなにも惹かれてしまうんだろうなぁ。

 穂乃香はそんなことを思考しながら、奏との甘やかなひと時に溺れていったのだった。


< 238 / 252 >

この作品をシェア

pagetop