フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
裏も表もございません!

『柳本。今、秘書に聞かされたんだが、奏がとうとう家を出てロスに発ったというのは、本当なのかっ!』

 奏の第一秘書であり執事でもある柳本の元に、竹野内グループの会長自ら内線ではなくスマートフォンのほうに着信があったのは、奏と穂乃香を乗せた飛行機がロスに向けて飛び立ってほどなくしてのことだ。

 いつもなら自身の秘書を通して会長室に呼びつけられるのだが、この日は違っていた。

 まぁ、無理もないだろう。

 ゆくゆくは自分の跡を継いで、世界でもその名を知らない者などいない大企業にまで成長した、竹野内グループを担っていく一粒種の奏が愛する妻のために会社も家も捨てるというのだから。

 といっても、そう見せかけているだけなのだが……。

 ――奏様もお人が悪い。何もここまで徹底しなくとも良かったでしょうに。

 奏の父、柳本にとって現当主という立場になるので、ほんのちょっとだけ同情の余地はある。

 そうは思いつつも、個人的な感情と、幼い頃から〝主になるお方〟だと言い聞かせられ、長年付き従えてきた奏の憂いを知っている身としては、妥当の報い。

 ――グッジョブ奏様!

 内心、そう呟いてほくそ笑む柳本だった。

 そんな雰囲気など爪のお先ほども感じさせない柳本は、事前に用意してあった台詞を迫真の演技と共にお披露目するのだった。

「……はい。残念ながら、事実でございます。この柳本、長年奏様に仕えて参りましたが、奏様を止めることができず、申し訳ございません。何と言ってお詫びすればいいものか……。もういっそこのまま窓から身を投げてしまおうかと……うっ、ううぅ」

 ――嵌め殺しの窓から、どう頑張ったところで飛び降りることなどできないのだが……。

 などと思いつつ、秀生にチラと視線を向けた柳本がスマホ片手にお得意の泣き落としを繰り広げている。その側で、弟の秀生が笑いを必死に噛み殺しているなどとは、電話の相手は夢にも思ってもいないだろう。

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