フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
その証拠に、泣き落としに慌てた恭一が必死な声で自殺を仄めかす柳本をまんまと止めにかかった。
『ま、待ちなさいっ! そんなバカな真似はよしなさいっ! 奏だってバカじゃないんだ! 話せば納得するはずだ。私だって、奏を失うくらいなら、あんなおかしなルールなくしても一向に構わん。否、なくさないと、会社が立ちゆかなくなる前に、優香に三行半を……いや、とにかく、責任をとるというなら、奏を説得しなさい。奏を説得できるのは、柳本お前だけだ。頼む。頼むからなんとかしてくれっ』
終いには、今にも泣きそうな震え声で、柳本に泣きついてくる始末。
明らかに様子がおかしい。
想像するに、奏がこのまま戻らなければ、妻の優香に離婚すると脅されてでもいるのだろう。
優香にとって、奏は大事な後継者である前に、可愛い愛息なのだ。あんな馬鹿げたルールのために息子を失うなど、納得できるわけがない。
優香は、若かりし頃、ファッションモデルとして脚光を浴びていたほどの、美貌の持ち主である。
美魔女とは優香のためにある言葉だと思うほど、愛くるしく蠱惑的な魅力で骨抜きにされてしまっている恭一同様、幼少の頃より密かに憧れを抱いていた柳本にとっても、優香の嘆き悲しむ姿など見たくない。そう思っているほどである。
――断っておくが、愛だの恋だのそういう邪な気持ちなど持ち合わせてはいない。単なる憧れだ。
柳本自身はそう思っているのだが、今の恭一の言葉に対して。
――息子のことで、秘書に泣きついてくるような、こんな情けない男のどこがいいんだ?
内心では、以前から何かにつけて柳本に泣きついてこようとする恭一に、日頃の鬱憤をぶちまけつつも、優香のためなら仕方ない。
いつものように、そう己に言い聞かせて、ご当主の言いつけを守るフリをして、ハネムーンを満喫するために異国の地へと飛び立った奏に、進捗をメールにて報告する柳本だった。