紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?

 そんな穂乃香の不安と画策をよそに、当の社長は意外にも大企業を背負っているだけのことはあるな、と穂乃香を感心させるほどの辣腕ぶりを見せている。

 てっきり公私混同と職権乱用を発揮されるのだろうと思い込んでいた穂乃香にとって、肩透かしを食らってしまったような心境だ。

 そこに仕事にストイックなくらいに真剣に情熱を注ぎ込む奏の姿が加わって、当初抱いていた印象はがらりと覆りつつある。

 正直、意外でしかなかった。

 大企業の御曹司という立場に胡座を掻いているものだと思っていたからだ。

 翌日から第二秘書として付き従えるようになった穂乃香は衝撃を受けることとなった。

 朝コーヒータイムの僅かな時間にその日の分刻みのスケジュールを確認し、その内容を一度耳にするだけで暗記してしまうことにも驚いたのだが。

 元々海外の超が付くほどの有名な名門とされる大学を首席で卒業しているそうで、技術職にも劣らない専門的な知識を有しているようだ。

 そういう背景もあって、海外帰りに加えて社長に就任したばかりでただでさえ多忙を極めているというのに、取引先や各部署からのアポイントがありリスケも日常茶飯事。

< 44 / 252 >

この作品をシェア

pagetop