フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
穂乃香が文字通りあたふたと慌てふためいていると、頭上からくっくと笑みを零す音が降ってきた。
密接している社長の身体からは、甘やかな香りだけでなく、微かに震える振動までが伝わってくる。
穂乃香がゆっくりと顔を上げた先には、口元に拳を当てて何かを堪えている社長の顔が待ち受けていた。
どうやら必死になって笑いを堪えようとしているようだ。
おそらくパニックに陥っている穂乃香の狼狽える様がおかしくて笑ってでもいるのだろう。
そう思うと無性に腹立たしくなってくる。
さっきまでの羞恥も忘れ、穂乃香は早口で捲し立て社長の身体を思いっきり突き飛ばしていた。
「いい加減にしてください。いくら移動中でも仕事中です。お触りはおやめくださいっ!」
社長の腕からようやく解放された穂乃香は、手にしていたタブレット端末を胸にぎゅっと抱きしめふうと大息をついた。
社長はといえば、「これは失礼」と両手を軽く挙げて謝罪すると、ガラス壁に長身を預けて楽しそうに眇めた瞳でこちらを見つめつつ軽口を叩いてくる。
「……けど仕事中じゃなければ、お触りOKってわけだ」