紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?

 柳本からの説明を聞き終えた穂乃香は不本意ながらも柳本の発案で、このままでは三ヶ月の試用期間後には結婚相手となるであろう、自身の存在をチラつかせて、今度こそ諦めてもらう戦法を決行することとなってしまっている。

 当然、そんなつもりなど全くなかった穂乃香は即座に反対し、意外にも奏も加勢してくれた。

「そんな騙すようなことできませんっ!」
「そうだな。まだ穂乃香の気持ちも決まっていないのに、そんな茶番に穂乃香を巻き込みたくないしな。心配しなくても今度こそキッパリと断るから任せておけ」

 だが家族代々竹野内家に仕えている柳本は、グループ内に留まらず竹野内家の内情にも詳しいようで、奏の弱いところを的確についてきて何とか考えを改めさせようとする。

「お言葉ですが。例の決まり事の件で、ご当主である恭一様にも口うるさく結婚を急かされてますよね。浅葱社長もそれを知っているからこそ、再三にわたって縁談話を持ちかけているのですよ。こちらが無下にできないのを良いことに。あの古狸がそう易々と諦めるとは思えません。ここは、穂乃香さんに協力してもらってはどうでしょうか? どちらにせよ結婚することには変わりないのですから」

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