フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
柳本に向けてピシャリと言い切った直後、柳本はスーツのポケットからハンカチを取り出したかと思えば、細面を苦しげにぐにゃりと歪ませた。
そうして顔をハンカチで覆うと嗚咽を漏らしつつ悲痛な声を漏らす。
「出過ぎた真似をして申し訳ございません。ですが……穂乃香さんのために、多忙な仕事の合間に睡眠時間を削って一生懸命奔走された奏様があまりにも不憫で。そ、それなのに……穂乃香さんは……血も涙もない……ううっ」
とうとうお得意の泣き落としという姑息な手段に出たのだ。
「柳本、みっともない真似をするな。穂乃香、柳本のことは気にしなくていい」
これには奏も呆れ果てている様子で、穂乃香にそう言って声をかけてくれたのだが。
酷い言われように黙っていられなかった穂乃香の口からは、柳本の思惑通りの言葉が放たれてしまうのだった。
「わかりました。尽力させていただきます」
そんな経緯があり、穂乃香は奏の第二秘書としてだけでなく、婚約者としても会食に臨むことと相成ったのである。