フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
浅葱の表情がにこやかなものから一変、驚き一色に塗り替えられていく。
だがそれも一瞬のことだ。
何やら思案するような素振りを見せた直後、奏の真意を推し量ろうとするような視線と問いかけとが飛び交った。
「それはおめでたいことだね。会長もようやく肩の荷が下りて、さぞかしお喜びになっているだろうねぇ。これまで浮いた話などなかった奏くんの心を射止めるとは、さぞかし素敵な女性なんだろうねぇ。一体どこのお嬢さんかなぁ」
どうせまた縁談を断るための口実に違いない。そう顔に書いているような、疑いの眼差しで奏の様子を浅葱はじっと見据えている。
そんな浅葱の態度にも一切動揺など見せない奏の堂々とした佇まいは堂に入っており、隙など全くない。
それどころか、末席で事の成り行きを固唾を呑んで静かに見守っている穂乃香に、ふっと笑んでみせるという余裕まであるようだ。
その笑顔ひとつで、緊張感に苛まれていた穂乃香は安堵感を覚えてしまった。
そんな自身に対して戸惑うばかりだ。
そこに再び奏のバリトンボイスが響き渡るのだった。