紳士な俺様社長と離婚前提の契約婚!?

「奏様、穂乃香さん、本日はおめでとうございます。心ばかりではございますが、私からのお祝いでございます」

 喜色満面にそう言ってきた柳本にシャンパングラスを渡されると共に飛び出してきた、思いがけないサプライズ発言をお見舞いされしまうという、とんでもない目に遭わされてしまったのは。

「それから、あの料亭で取り逃がしてしまった男の正体ですが。実は、あれは私の弟の秀生《しゅうせい》でございます。ですので、奏様も穂乃香さんもご安心くださいね」

 ーーひ、酷い! 何がご安心くださいよ。こんなのだまし討ちじゃない!

柳本の所業に激怒し元の部屋に戻ろうにも、抜かりのない柳本に既に引き払われてしまっている。

 新しい部屋を探すにしたって、柳本に妨害されるに決まっている。

 一番厄介なのは、弟・樹と叔母・雪への説明だ。

 気乗りしないためギリギリまで先延ばしにしていたのだが、そうも言ってられないとつい先刻、弟の樹に引っ越しの件で連絡を入れたところ。

 その際、近くにいた柳本に「言い出しにくいでしょうから私のほうからご説明を」などと口を挟まれスマートフォンを掻っ攫われてしまったことにより。

 転職先の社長である奏と運命的な再会を果たした穂乃香はすぐに奏と結婚前提の交際をスタート。その結果、双方の気持ちが高まり、この度めでたく同棲することになった、という話になってしまっている。

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