おともだち
「仁科、好きな子いるって」
「……え? 」

 あの頃のこと思い出してる所だったのでパッと顔を上げた。好きな人?

「俺さ、今だから言うけど、あの頃仁科のこと気になってたんだよ。だから、ふたりで遊びに行かないかって誘ったんだよ。気づかなかった? 」
「そう……だったの……」

 でも、2回目のデートはなかったし、誘おうにも美羽ちゃんと付き合い始めたって聞いた。

「はは、全然興味無かったんだな、俺に」
「そんなこと無いよ! あの頃は私も加賀美くんのこと好きだったもん」
「え」
「え」

 微妙な空気になった。じんわりと汗が滲んでくる。

「でも、俺と遊びに行った後、俺のこと微妙に避けてただろ? そんな時。仁科は好きな子がいるよって聞かされて、あー……そっか。って落ち込んでたら美羽に告白されて、絆されたんだよな」
「私に対して、まだいいなって思うくらいの気持ちだったからでしょ」
「そうかもね、まぁ、もう昔の話だし。もし俺のこと好きだったならもったいない事しちゃったなって思うけど、それなら美羽と付き合うことはなかっただろうし、何にしても今更」
「うん、そうだね」

 済んだことだ。そう思うのは今私にちゃんと好きな人がいるからだろう。加賀美くんも、美羽ちゃんとは別れてしまっても、いい思い出のほうが多いのかもしれない。何となくだけ、別れた彼女の悪口言わない所、好感が持てた。加賀美くんが振ったのかもしれないけどさ。

 昔、両想いだったかもしれない人。昔好きだった人。でも、思い出話でいくらかあの時の消化不良だった気持ちが昇華された気もする。
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