おともだち
「でもさ、やっぱり、りっかちゃんは……そんな偶然会ったり、相談なんて……」
「あの辺で仕事してて昼時なら会ってもおかしくないだろ。あー……いっか。秘密ね、これ」

 栄司は私に近づき耳打ちした。りっかちゃんと加賀美くんとの関係を。

「っええー! そうだったの」
「そ。向こうの俺のことなんて何とも思ってないよ。心に誰かいるからねぇ」
 栄司はそう含みを持たせて笑った。
「もう! 」

 勝手に妄想して勘違いしてやきもちやいて恥ずかしいったらない。
 
「で、最後の、だけど。これからいっぱい言うから許して」
「え、最後……? あ、ああ! 」

 顔が更に熱くなる。

「好きだよ、多江」
 
 ぐっと、涙がにじむ。
 他人に心許すのが怖かった。他人の好意に応えられるかなって思えば思うほどつらくなった。この感情を知っているからこそ、自分が相手を好きになった時、相手から疎ましく思われるんじゃないかって。

「私も、好き。栄司……」
 うんうん、頷くと、栄司が優しく手を伸ばしてくる。
 
「デートがいちいちイベントになんのしんどいだろう。でも、何もしなくてこれだけ一緒にいても今は平気、じゃない? 」
「確かに、うん。もっと一緒にいたいとまで思っちゃう」
「うん。ね、じゃあ、俺にありがとうは? 俺のお陰じゃん」
「あはははは! ほんとそうだね、ありがとう栄司」
「冗談だったのに。恥ずかしいじゃん」

 照れ笑いをする栄司に愛おしさがこみ上げる。
「私だって、めんどくさくてごめん」
「いーよ。俺だってもう気持ちが引けないとこまできてるし。楽しいんだよ。こんな学生みたいに感情で突っ走ったの初めてかも」

 そう言って笑った。

「そうだね」

 私たちはぴったりとくっついて、そこから夕方まで眠った。ただ一緒にいるだけの何もしない1日だった。


 ――この人となら、きっとうまくやっていける。これから先もずっと。







 ――――――end
 
 


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