おともだち
「あ、そうだ。ごめん、後部座席見てくんない? 飲み物買ってるから。車内乾燥してるかも。好きな方飲んで」
 
 咳を心配してくれたのか。これは胸の痛みを逃す咳だったけど……。

「ありがとう。ごめんね、私が用意すべきだったのに」
「いいって。ほらほら、気を使わない。行先を俺が勝手に決めちゃったし」
 そっか、本当は行先とかも私が行きたい所に決めてしまうのが正解だったのかな。

 袋の中にはレモンティーと栄養系の炭酸飲料が入っていた。エナジードリンクというほどでもないビタミンCのものだ。
「これ、絶対にこっちが宮沢くんのだよね。疲れてる? 」
「疲れてないけど、疲れる前にチャージ? 俺ののつもりで買ったけど、仁科さんもさっぱりしたいならそっち飲んでもいいよ」
「あはは。運転ありがとう。眠くならないように横でずっとは話かけとこうか? 」
「いや、動物園なんて久しぶりだしテンション上がっちゃうだろうから、事前にチャージってこと。車の運転は短時間だしそんな苦にならないよ」
「そう? 」
「うん。しんどかったら電車で行ってる。でも、せっかくだから話をしよっか。この前途中だったもんね、『続きはまた今度』って言ってた恋愛観」
「は……、あ、そうだったね」

 続き、続きって話の事か。てっきり、何かする方の続きかと……。

「あれ、顔が赤いけど暑い? 窓閉めてクーラーつける? 」
「大丈夫! 」
「そ? 暑い寒いはすぐ言って」
「はい。ねえ、私の過去の恋愛はもう全部話したよ」
「うん。今さ、俺ら結構会ってると思うんだ。この頻度は無理してるの? 」
「そ、そうだよね」

 指摘されて、かぁっと顔が熱くなった。そうだ、週に1回……は会ってる。といってもまだ二人で会うのは2回目だけど。会社で出会う事もあるので――もちろん会社では挨拶程度のことで、それでも顔を合わせると体感的にはもっと会った気にはなる。
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