おともだち
「だって、この週末のために仕事してるんだよ」
「あー、違いないね」

 目的地はすぐ近くだ。栄司が酒類の取り扱いが多いショップを見つけたらしく、今日の夕食の買い出しに一緒に行くことになっていた。案外近くにあったことに驚く。
 店に着くと手を離されてしまい、それすら寂しい。代わりに栄司の手にはかごが握られた。

 食品もお酒に合いそうなものが多くて見ているだけでも楽しい。

「ヘーゼルナッツのチョコ買ってもいい? 」
「ん、いいね。多江、ミントは苦手って言ってたけど、癖のある野菜はいけたっけ? 」
「全然いける。大好き」
「おっけ、おっけ」

 栄司はベビーリーフを厳選してかごに入れていた。

「酒ー、来週の分も買っとく? 」

 ドキリとして足を止める。栄司が、ん?とばかり首を傾げた。

「うん、そうしよ」
「今日飲みすぎちゃったらまた買いに来たらいいし。案外店が近い」
「うん。私も思った。栄司におしえてもらわなかったら損してたよ」
「はは、大袈裟な」

 栄司は笑ったけど『来週の分』が嬉しくて顔が緩む。来週、まだ誘ってないけど栄司の中でもう会うことになってるってことだよね。もう約束の期間までそんなに残ってなくてまだ一度も栄司からは誘われてないけど、会うことが当たり前になっているのが嬉しかった。
 
 顔が緩まないようにぐっと唇を噛んだ。ますます言いたくなってきちゃった。……好きだって。

 お酒、瓶で買っちゃおうかな。そしたら来週も再来週も一緒にいられるかもしれないから。目の前の棚に手を伸ばした。
「炭酸も買うかぁ」
 それを見て栄司が楽しそうに言った。
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