チカ先輩のお気に入り。




帰り、チカ先輩を玄関で待っていると遠くから姿が見えて。
近くに来てから名前を呼ぶ。


「雪桜、ごめん遅くなって」

「いえ、全然ですよ」


私に気づいたチカ先輩の表情が優しくなり、それにドキッとする。
行こう、と笑ってさりげなく手を繋いできて。

当然、周りからの視線は気になるし話し声もするけど。
でもチカ先輩が女の人に塩対応になってから、前ほど話しかけられることはなくなった。
それに……チカ先輩は私だけに笑ってくれるから。

チカ先輩とそのまま学校を出て駅まで歩く。


「……ふふ」

「どうしたの?」

「なんか……こうしてチカ先輩と手繋いで歩けてるのが嬉しくなって」


居心地いい空間に、笑みがこぼれる。
正直に考えていたことを話すと、チカ先輩は驚いたように目を見開いて。
そしてすぐ、優しく笑った。




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