チカ先輩のお気に入り。




「雪桜ちゃんはさ」

「…っ」

「ずっと、他の男なんて知らないままでいいんだよ」

「…な、なにを……っ」


何言ってるの。どういう意味なの。なんでそんな事言うの。
チカ先輩は、私に興味ないくせに。好きな人いるんでしょ。

私の知らない大人な先輩。私には刺激が強くて、クラクラしてしまう。


「だって、俺のワンちゃんでしょ?」

「ち、違……っ」


なんでこんな時までワンちゃん扱いするの。ムカつく。
なのに、私の心臓はドキドキうるさくて、身体中の体温が上がっている。顔が熱い。胸が苦しい。


すると、チカ先輩の顔が私に近づいてきて。
……っ、嘘、私……っ。
初めてを奪われてしまう、と思って思わずギュッと強く目をつぶって身構えた。


「……なんてね」


すると、上から降ってきた声は、先程までとは違ういつもの調子に戻っていて。
ゆっくり目を開けるとチカ先輩はニコニコ笑っていた。



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