この消しゴムは誰のですか?
 隣の席の女子は、忘れ物が多すぎる。
 国語、数学、英語、理科、社会。
 その教科書を、毎日どれか一つは忘れてくる。

 忘れたことを申し訳ないとは思わないのか、逆に通学カバンにそれが入ってないことが悪いのだと、自分は被害者だと言わんばかりに僕に訴えてくる。
 
「とっても信じられない! なぜだかカバンの中に国語の教科書が入ってないの! ホント信じられない!悪いけどお願い!」
 
 僕が許可しないうち、その忘れ物女子は僕の机の左端に自分の机の右端をくっつけてくる。
 とても強引だ。
 僕に貸すか貸さないかという選択権はない。
 仕方がなく僕は、彼女の机と僕の机の境界線に、国語の教科書の真ん中の部分を置いて共有することになる。

 一人で見る教科書より、二人でシェアして見る教科書はとても見にくいし、僕の教科書なのになぜか遠慮してしまう。
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