婚約破棄された崖っぷち令嬢ですが、王太子殿下から想定外に溺愛されています
巻き込まれてばかりの人生だった――と、アルテミラは振り返る。
日本という比較的平和な国で生まれたにもかかわらず、常に何かに巻き込まれていた。
子どもの頃から他人のもめごとや恋愛事情に巻き込まれることは日常茶飯事で、ここぞという時は自分一人では解決できないほどの大ごとになることもしばしばだった。
第一志望の大学入試では、雪でスリップした車に突っ込まれたケガ人にコートの裾をつかまれ、救急隊員に知り合いだと勘違いされて一緒に救急車で運ばれた。そのせいで入試の時間に間に合わず不合格となった。
なんとか滑り込んだ大学では、昔からの趣味が高じて入部したマジック同好会での夏合宿で、崖から飛び降りたように見せかけるマジックを考えている最中に人違いで崖から突き落とされてしまった。
スローモーションのように流れる走馬灯は、どのシーンも全て自分の巻き込まれている姿だった。
その瞬間、アルテミラは願った。本気で願った。
(――もし生まれ変わるならば、二度と巻き込まれることなく、子どもたちに趣味のマジックでも見せながらスローライフを送りたい……!)
そして一筋の光明が見えたところで、呆気なく人生終了の幕が下りたのだ。
次に気がついたのは、この新しい世界で生まれて初めて声を出した時。
しかし、まさかこうして生まれ変わった先が、魔法のある世界だとは……。
本当に神様も人が悪い。アルテミラはそう思わずにはいられなかった。
領地で子どもたちに披露しても、ちょっと変わった魔法としか思われなかったこのマジック。
それでも、アルテミラは皆に少しでも楽しんでもらえれば良かった。それこそが彼女の生まれ変わる直前の願いであったからだ。
けれどもトマスにはそれすらまるで役立たずのように言われてしまい、あまつさえ、あのような騒ぎの原因になってしまった。本当に宝の持ち腐れだと……いや宝ですらないのかと、ため息をつく。