偶然?必然?運命です!

「お姉ちゃんね……」



岸井さんのことを思い出して自然と微笑む。


そしてコツッと璃遠のオデコに自分のオデコをあて



「好きな人が出来ました」



キャッ、言っちゃった!!


まだ一歳の赤ちゃんに言っちゃった!!



「あー?」


「そう、野犬から助けてくれた人。誰も見て見ぬふりをする中で手を差し伸べてくれた」



欠けた月が照らした岸井さんはキラキラと輝いていて……


まるで王子様みたいだった。


私は一生あの瞬間のことを忘れない。


とってもカッコよかったんだよ、と言うと



「あー!!」



璃遠、大興奮。


落ち着けっ。



ポンポンと璃遠の背中を優しく叩く。



「う?」


「うっ……。名前は聞けたけど…連絡先は教えてもらえなかったぁ」


「あっ?」


「もちろん!!諦めたりなんてしないわ!!必ずまた会うんだから!!」



ムンっと拳を握りしめて月に突きだす。



初恋よ!?


そう簡単に諦めたりなんて出来ないし、それに……



「う?」


「ううん、なんでもない。さっ寝ようか」


「あい」



しばらくそのままの状態でいると、健やかな寝息が聞こえてきた。



「おやすみ、璃遠」













アォーーーンッ!!



今日はやけに野犬が鳴くわね。


でもこの遠吠えは怖くなかった。


むしろ守られているような……


私は璃遠をベッドに寝かすと、自分もその横に寝そべった。


おやすみなさい、岸井さん。


きっとまた会えるよねーー。





アォーーーンッ!!


















不思議な夢を見た。


深い深い森にーー銀色の狼が居て


ジッと私を見ているという。



いや、私が見たいのは岸井さんの夢で狼ではな



そこで目が覚めた。
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