叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

 「由花?」

 聞き覚えのあるテノール。振り向くと茶髪におしゃれな眼鏡をかけた神田ホテルグループ総帥の神田藤吾その人だった。

 「……藤吾」

 すぐにこちらへ近づいて来た。私は一歩下がった。すると駆け寄って来て、腕を捕まれた。

 「!」

 「……逃げないでくれ。あのときは悪かった。俺もこんなことになるとは思っていなかったんだ」

 嘘をついている目ではない。でも今まで連絡がなかった。それが答えだろう。

 「もういいです。婚約されたと聞いています。おめでとうござ……」

 「やめてくれ。父達にはめられたんだ。お前と約束していた日に呼び出されて……。本当にすまない。俺は今でもおまえを……」
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