叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

玖生の縁談

 
 玖生はアメリカへ飛んでからというもの、分刻みのスケジュールに忙殺されていた。今日は杉原ロジスティクス社長との久しぶりの面談が予定されていた。

 アメリカ全土での清家財閥の物流をすべて担う会社だった。社長は経営者としても有能で、若く経験の浅い玖生の相談に色々乗ってくれた頼もしいビジネスの大先輩だった。

 その娘こそ、祖父が縁談相手に指名してきた亜紀だ。玖生の五歳年下の杉原亜紀は優秀で、玖生のカレッジに十七歳でハイスクールから推薦されてきた。

 高校生の娘を心配した父親が玖生を紹介し、できるだけ助けて欲しいと頼んだのだ。渡米してすぐに祖父から杉原社長を紹介されていた玖生は断ることも、冷たくすることも出来ず、妹のようなつもりで接してきた。

 彼女は玖生の意に反して、彼に恋心を抱きはじめ、告白してきた。

 大学卒業を機に日本へ戻り、本格的に仕事を始める矢先だった。その時はそれを理由に彼女を説得して断った。彼女はアメリカで父の会社へ入社が予定されていたこともあり、追いかけてはこなかった。

 だが、アメリカへ玖生が仕事で来るたび、必ず会いにくる。そして、付き合ってくれと言う。数年しても彼女は全く結婚しない。もうすぐ三十歳になるというのに、父親の勧める相手や言い寄る男性を袖にしてきた。理由は玖生。
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