冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

「うちはうちで、結構大変だよ」
「あ、思い出したっ!彼氏でもないのに公認食事会ね♪」
「……うん、さすがに合わせてくれたけど、完全に引いてたと思う」
「ハハッ、ママさん、押し強いもんね~。でもさ、上條なら、引いたりしないと思うけど」
「……どうだろ、Wデートだなんて、非常識すぎるでしょ」
「アハッ、さすがにうちの両親なら無理だわ。まぁ、まどかんちの両親ならアリかもだけど」
「………」

和香が初めて遊びに来た日なんて、そのまま『泊まって行ってね』とゴリ押しして強制宿泊させたくらいだ。
だから、仲良くなっても友達を自宅に呼ぶのは躊躇してしまって。
娘が目の前にいようが未だに『行ってきます』のチューをするし、リビングで膝枕してラブラブするし、本当に目のやり場に困る。

だからあの日、上條君に迷惑を掛けたんじゃないかとずっと気になっている。

元々学校ではほぼ会話は皆無だし、放課後や休日だってメールや電話も殆どない。
たまに和香と藤宮君が、気を利かせて一緒に下校する感じにしてくれるけれど。

『猛アプローチ中』だなんて言ってたけど、うちの両親を基準に考えると、全くと言っていいほどアプローチされてる感はない。
まぁ、クラスメイトの前で宣言したり、全校生徒を前に嫉妬したようなことを言われたから、何となくそんな気分にならなくもないけれど。

正直、恋愛がどういうものかすら分からない私には、何をどうしていいのか分からないことだらけで。
だから、彼がどう感じたのかなんて知る由もない。

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