結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
第八章 それでもあなたに会えてよかった
旅行から帰ってきたら、紘希に別れを切り出す。
そう、決めていた。
しかし、現実は。

「父さんが忙しいから、もうしばらく待ってとはな……」

夕食を食べながら紘希が憂鬱なため息をつく。

「お仕事なら仕方ないよ」

それに苦笑いで答えた。
彼の父親はなんだか面倒な裁判が入ってきたらしく、しばらくは息子の〝紹介したい人〟に会うほど余裕がないそうだ。
おかげで、これでまた紘希と一緒にいられる時間が延びた……とか、喜んじゃダメだよね。

「まあ、でも。
会社では純華と俺が付き合ってるってオープンにしたからいっかー」

嬉しくて堪らないのか、紘希の顔がデレデレに崩れた。
このあいだの仕事の成功で紘希が後継者になるのは決まったようなものだし、会長にも結婚を考えている人がいると伝えてある。
もうこれ以上、秘密にする必要はないからと関係をオープンにしつつあった。
とはいえ、結婚はさすがにまだ言えないし、吹聴して回っているわけでもないが。

「近いうちに今度こそ、結婚指環を見に行きたいな」

私が彼を受け入れたから、紘希は私が完全に彼との結婚を受け入れたのだと思っている。
本当は別れを決めたからなのに。
そういうのは、凄く苦しかった。



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