結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
お昼休みになり、紘希に言われたとおり玄関ロビーで会長を待つ。
すぐにエレベータから降りた会長と紘希が見えた。

「純華」

会長と一緒だというのに、紘希がご機嫌に駆け寄ってくる。

「ちょっと!
会長、置いてきていいの?」

「あ、そうだった」

すぐに彼は振り返り、会長を迎えに行った。

「今日はランチにお招きいただき、ありがとうございます」

「いえ。
私もあなたの顔が見たくて、わがまま言ったものですから」

柔らかく会長が笑う。
柔和なお爺ちゃんといった感じだが、曲がったことが大っ嫌いで相手が官僚でも平気で怒鳴りつける。
そんな彼がどうして、あの鏑木社長を野放しにしているのかは不思議だ。

予約してくれていた、徒歩圏内にある料亭へと向かう。
仲居がおしぼり等を出して下がったあと、紘希は私を会長に紹介してくれた。

「えっと。
俺が結婚……を考えている、瑞木純華さん」

会長を前に、紘希は珍しく緊張している。
さすがにまだ、結婚したとは言いづらいらしい。

「瑞木です。
ふつつか者ですが……」

「そういう堅苦しい話は抜きにしましょう」

これでいいのか悩みながら挨拶をしていたら、会長に遮られた。

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