バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
ある日、いつものようにミニカーを見ていたら、航がすみれに言った。

「どれでも好きなヤツ、ひとつ持っていっていいぞ。」

「いい。いらない。」

航がそれらをとても大切にしていることを知っていたすみれは、大きく首を振った。

「いいから。好きなの選びな。」

そう何度も言われすみれは、実はひそかにお気に入りだった黄色いワーゲンを指さした。

「じゃあ、これ。」

航は人差し指と親指でそのワーゲンをつまむと、すみれの手の平に乗せた。

「なるほど。すみれらしい選択だな。黄色いワーゲンを見ると幸せになれるらしいぞ。大事にしろよ。」

「うん!」

「すみれが大人になって、子供が出来たらそれで一緒に遊んでやれ。」

「じゃあ私、航君の子供を産む。」

「おいおい。すみれは大胆なこというなあ。こっちが照れるだろうが。」

「だって子供って結婚すれば出来るんでしょ?私と航君が結婚すればいいじゃない。」

「正確には結婚するだけで子供が出来るわけじゃないが・・・ま、いまはそんなこと言っていても、そのうち気が変わるさ。女心と秋の空っていうからな。」

「変わらないもん!」

「俺はお前の叔父だぞ?」

航は腕組みをしながら、眉毛を下げて笑った。

その時のすみれはまだ幼過ぎて、その言葉が自分への牽制だということに気付いていなかった。

すみれはその黄色いワーゲンのミニカーを、小さな巾着の中に入れていつも持ち歩き、お守りのように大事にした。
< 11 / 74 >

この作品をシェア

pagetop