バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
航はなおも大原を質問攻めにしていった。

「酒は飲むの?酒の席で乱れたりしない?」

「たしなむ程度です。」

「家族仲はどんな感じ?」

「父も母も物静かで喧嘩ひとつしない夫婦です。僕もそんなに怒られた覚えもないですし、まあ普通の家族です。」

「ご兄弟は?」

「7つ年上の姉がひとりいます。もう結婚していて3歳の子供もいます。義兄さんの仕事の関係で今は名古屋に住んでいます。姉も母に似て穏やかで優しくて、姉弟仲は良好です。」

「そうか。じゃあすみれを嫁に出しても姑や小姑にいびられることはなさそうだな。いや、それは会ってみないとわからないか・・・。」

「航君!私達、結婚なんてまだ考えてないよ。ねえ、大原君。」

「はあ。まあ・・・。」

すると航は見たこともないような真剣な顔で、大原をみつめた。

「すみれと付き合うなら、結婚するつもりで付き合って欲しいな。すみれを一生幸せにする覚悟のない男には、すみれを渡すことは出来ない。浮気なんてもっての外だ。すみれを傷つけるようなことがあったら、俺は全力で君からすみれを奪い返す。」

「・・・・・・。」

すみれは航による大原への厳しいチェックに、少し驚いていた。

航はすみれの恋に諸手を上げて賛成するだろうと思っていたからだ。

航はなおも言い募った。

「すみれは人生の早い時期に大切な家族を失っている。だからすみれには温かい家庭を築いて欲しいと思っている。大原君、君にはこれから未来永劫、誰よりも何よりもすみれの事を一番に考えて欲しいんだ。それを約束してくれるなら、すみれとの交際を認めよう。」

大原は航の言葉にまっすぐに答えた。

「はい。僕はすみれさんを一番に考え、大切にします。」

「・・・わかった。それを聞いて俺も安心した。すみれもこれからは大原君を一番に考えて生きていくんだぞ。」

私の一番は航君なのに・・・。

でももうその言葉を二度と発することは出来ないのだ。

「・・・はい。」

すみれは偽物の笑顔を貼り付けて、ただそれだけをつぶやいた。
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