バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
その後、すみれは大原を駅まで送った。

外はもう雨が上がり、傘も必要なかった。

大原は顔を顰めながら大きなため息をついた。

「野口さんには悪いけど、なんだかすごい罪悪感だ。」

すみれは大原に向かって首を横に振った。

「ごめん。本当に大原君には悪いことをしたと思っている。私も航君があんなことを言い出すなんて思ってもみなかったから・・・。」

駅までの道すがら小さな児童公園があり、すみれと大原はその公園にしつらえてあった古いベンチに座った。

すみれは自動販売機で温かいペットボトルのコーヒーを買い、大原に手渡した。

「とりあえず今日のお礼。あ、もちろんこれで終わりにするつもりはないよ。大原君の頼み事ならなんでもするつもりだから。これから一緒に飲みにいくときは私が全額出すし。」

「そんなことはどうでもいいけどさ。」

大原はペットボトルの蓋を開け、コーヒーを一口含んだ。

その少し怒ったような声に、すみれの身体は小さく縮こまった。

「野口さん、叔父さんにめちゃくちゃ愛されてるじゃん。」

「それは姪としてだよ。もしくは娘に対する愛情。」

「そうだろうか。僕には叔父さんが一人の男として、君を愛しているように感じたけど。」

「じゃあどうして私の想いを受け入れてくれないの?」

今度はすみれが声を荒げた。

「きっと野口さんは叔父さんにとって神聖な存在なんだ。愛しすぎていて触れられないんだよ。男ってそういうとこあるんだ。」

「・・・こんな嘘ついて、航君を騙して。本当にこれで良かったのかな。私、どうしたらいいんだろう。またわからなくなってきたよ。」

すみれは両手で顔を覆い、俯いた。

そんなすみれの背中を大原がそっと撫でた。

「でも・・・そうだね。君は叔父さんと一回離れてみたほうがいいかも。そうすることで君と叔父さんの関係も変化するかもしれない。」

「変化・・・?」

「そう。それが野口さんにとっていい方に転ぶか、悪い方に転ぶか、それは判らないけれど。」

すみれは公園に遊びに来ている女の子と、その父親らしき男性を見た。

女の子は父親の肩に抱きつき、楽しそうにはしゃいでいる。

航君にとって私は、あの小さな女の子のままなんだ。

そんな私と航君の関係が変わることなんてあるはずがない。

すみれは冷たい風に吹かれながら、父親におんぶされる女の子をじっとみつめた。
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