バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
それからのすみれの行動は早かった。

すぐに不動産屋で手頃な物件を探し始めた。

職場に1時間以内で通え、家賃も予算内で抑えられる1kのほどよく綺麗なマンションを見つけたすみれは、すぐに賃貸契約書へサインした。

航には一切相談をしなかった。

引っ越し準備を進めるすみれを、航はただ見て見ぬふりをしていた。

住むところが決まり、すみれは段ボール箱に荷物を詰め、いるものと捨てるものを振り分けることにした。

しかしその作業は困難を極めた。

何を取っても航や桔梗との思い出が詰まったものばかりで、それらを捨てるのは身体の一部を引きちぎられるような痛みを伴うことだった。

荷物と空の段ボール箱に埋もれ、動けなくなったすみれに初めて航が声を掛けた。

「持っていけないものは、そのまま部屋に置いていけ。ここはずっとすみれの部屋だ。」

「航君・・・。」

「それはお前がどこへ行こうとも変わらない。大切なことだからもう一回言う。すみれ、お前の家はここだ。一人暮らしに飽きたらいつでも帰って来い。」

「・・・うん。」

すみれは後ろ髪を引かれる思いで、その言葉に頷いた。

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