バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
そしてデートの日。

いつもは家事がしやすいようにTシャツにジーパン姿のすみれも、今日は麻のシンプルなワンピースに小さなハートのイヤリングを付けてお洒落をした。

迫田の職場が臨時休業になった平日の午後、すみれは迫田に連れられて山手線に乗った。

電車は都心から東京の東へ向かって走っていく。

窓の風景も都会の街並みから庶民的な建物へと移っていった。

吊革でバランスを取るのが難しい迫田の為に、すみれはすかさず優先席を陣取り、迫田を座らせ自分も隣に腰かけた。

車内が空いていたのが有難かった。

「どこへ行くんですか?」

すみれの問いかけに、迫田はにやりと笑った。

「どこだと思う?」

「どこだろう・・・。スカイツリーとか?」

「おばあちゃんの原宿。」

「巣鴨ですか?」

「そう。吉祥寺とか下北沢の方が良かったかな?」

「いえ。私、巣鴨は初めて行きます。楽しみ!」

「それは良かった。」

巣鴨駅を降り、すみれと迫田は「巣鴨地蔵通り商店街」へ向かった。

商店街は和菓子やおせんべいといった和を感じさせる店が多く、下町情緒にあふれていた。

道行く人たちは、意外と若者も多く、それなりに人通りもあり、観光に来ている外国人もちらほら見受けられた。
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