御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 「知ってるよ。篠田課長のことでしょ?なんか、専務もどこかの部署で口にしたらしいよね。信じらんない、香那がいるの知ってるくせに……」

 「この間、紗良先輩のところへ赤ちゃんを見に行ったの。その時に篠田課長のこと、昔ふたりに色々あったことを教えてもらった。だから、篠田課長の気持ちも少しはわかる。だけど、英嗣さんもどうしてきちんとしないのか、それがわからないの」

 「水川。おそらく、本部長はとっくにけじめつけてるけど、その課長が諦めきれないんだろ?ここまで噂になると彼女も引くに引けないんじゃないか?まあ、大丈夫だよ。あの本部長は香那にぞっこんだ」

 「そういう香那だって、元カレが椎名不動産の担当者だったんでしょ?どうなったの?」

 香那は最終日、実はやり直したいと言われた。だが、すぐに断ると笑われた。そう言われることもわかっていたけど、言いたかっただけだと謝られた。そして、あのキッチンを実現できるといいなと言われて別れたのだ。

 「……私が相当頑固だったとばれた。昔はここまでとは知らなかったんじゃないかな。お互い様かもしれないけど。大人になってから会うと違う面が見えるからね」

 「喧嘩別れしたわけじゃないでしょ?」
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