御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 「うん。お互いをよく知る古い友達っていう感じ?」

 「いいな、それ。理想じゃないか」

 「博士の作った新しい鍋、すごくいいね。使っているお客さんからも褒められるよ」

 「そうでしょ?私もいいと思ってた。よかったね」

 博士が赤くなっているのを見て、佐知が顔色を変えた。

 「……まだ、香那のこと好きなの?」

 「……はあ?どうしてここでそんなこと言うんだ?お前、俺を信用してないのか?」

 香那はお金を置いて立ち上がると、ふたりに言った。

 「はいはい。邪魔者は消えますので、あとはおふたりでどうぞ。今日はありがとう」

 「おい、お金はいいよ。お前のお祝いなのに……」

 「ううん。少しだから、もらっておいて。足りないところは頼んでいい?」

 「もちろんだよ。気を遣わせてごめん。またね、香那」

 香那はふたりに手を振ると家へ帰っていった。
 
< 260 / 283 >

この作品をシェア

pagetop