臆病な私の愛し方
 さすがの黒川さんも少々驚いた声。
 私はようやく肝心なことを言い忘れていたことに気付き、言い足した。

「あ…お礼のものをお渡ししたいんです…。お時間は頂けませんか…?」

『お礼?ああ…』

 私の言った意味を理解してもらえたらしい。

『ありがとう。いつ空いてる?俺は夜九時過ぎならいつでもいい』

 今度は少しだけ明るい黒川さんの声にホッとする。

「良かったです!!…明日でもいいですか?なるべく早めに…あ、日曜日ですしお忙しかったら…」

『大丈夫だ。じゃあ夜九時半、駅前で』

 私は舞い上がったまま、またお礼を言うと電話を切った。

 あとはお礼を…

 そこで私はまた、重要なことを黒川さんに聞き忘れていたことを思い出した。

(…駅前のお店のお菓子にしようと思ったんだけど…黒川さんは甘い物、大丈夫かな…。それに、黒川さんに家族がいたら迷惑かもしれないと思っていたのに…)

 しかし黒川さんは大丈夫だと言っていた。
 本当に迷惑なら、きっと私の頼みを断っていたに違いない。

 それに、お菓子はまだ手にも入れていない。
 私が目指しているのは人気のお菓子屋さんのもので、トロい私が買えるかどうかもわからない。

 私は何とか気持ちを切り替え、早起きを心に決めてその日はドキドキしながら眠りについた。
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