臆病な私の愛し方

彼に電話を…

 私は何とかアルバイト先を決めて面接を受けた。
 あとは採用結果を待つだけ。

 学校では講義を受けていても友達と話をしていても、どこか上の空でボーッとしてしまう。

 色々なことがあったから…
 でもそろそろ黒川さんにお礼をしないと、私のことなんかきっと忘れてしまう。


 私はコンビニでアルバイトをしていた時に彼が現れた時間に、思い切って電話を掛けることにした。

 心臓がバクバクと鳴って、指が震える。
 そして何度も自分が押した番号を見直してから発信すると、すぐに相手は電話を取ってくれた。

「…もしもし…黒川さん、ですか…??」

 私がそう尋ねると、『はい』と返事が返ってくる。
 機械を通しているから少し変わって聴こえるけれど、この感情の入っていないような声は間違いない。

 私はすぐに名乗り、コンビニの時の、と付け加えた。

「良かった…出てくれた…!!あの…お礼をさせていただきたいんです…。しばらくお会いできなかったので伝えられなくて…」

 黒川さんにお礼とコンビニを辞めたことを報告すると、『そうか』と返ってきた。

 きっと今を逃せば、黒川さんにもう二度と会えなくなる。
 せめてあとはお礼を渡すことができたら…

 私は断られないかとビクビクしながらも、勇気を出して言った。

「黒川さん、あの…お願いなんですが、私と会っていただけませんか…?」

『…君と…??』
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