御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?
「苺花・・・ごめんね、怖い思いさせて」
久しぶりに間近で見た琳凰くんの目は少し揺れていた。
「大丈夫・・・じゃ、なかったけど、もう大丈夫。よかった・・・。琳凰くんも、お父さんもお母さんも、みんな何事もなくなって・・・・・・本当に」
「うん・・・・・・ねぇ、苺花」
「ん?」
「俺は苺花が好きだよ。だから離れたくない」
琳凰くんのまっすぐで真剣な瞳に捕まった。
「爺さんが言ってたとおり、俺といることで苺花をまた辛い目に合わせることになるかもしれない・・・・・・でも、俺は苺花と一緒にいたい。何があっても絶対守れるようになるから、だから、これからも一緒にいて欲しい」
「・・・・・・うんっ、私も琳凰くんと一緒にいたいっ」
そう答えた瞬間、ガバッと勢いよく抱きしめられた。
「苺花」
低くて色気を纏った琳凰くんの声に胸が痺れる。
至近距離で熱い瞳に再び捕まると、唇が優しく重なった。
目尻からツゥと涙が流れていく。
よかった・・・
本当によかった・・・
これからも琳凰くんと一緒にいられるんだ。
一緒にいていいんだ。
自分で別れを告げてから心にぽっかり空いていた穴が、じわじわと満たされていく。
何度も重なる琳凰くんの熱で、こんなにも求められているんだと胸が熱くなった。
「んっ・・・」
無意識に琳凰くんの制服をぎゅっと掴んでそれに応えていた。
夕暮れに照らされた影がしばらく離れることはなく、
だんだんと窓の外が夜に変わっていった。