攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
 グレンジャーの養父のカーネル・オルコットも、オスカーのことを気に入っているようで、彼が泊まると機嫌が良いので、いつの間にかカーネルのシフトに合わせて、オスカーを誘うようになった。


 夕食のワインに酔ったカーネルが、昔話のついでに『見せてやる』と言い出した。
 食卓の上に、例のシガレットケース、辞典、花瓶、レンガの4つを、並べていく。

 酔ったカーネルが、デモンストレーションのように。
 次々に標的を撃っていく。
 シガレットケースを弾き飛ばし、辞典を撃ち倒し、花瓶の花びらを散らして、最後のレンガを砕いた。


「標的に合わせて、魔力の込め方を変える。
 グレンは覚えが早くてな、自慢の息子だよ」 

 親父殿が得意気に胸を張り、オスカーが拍手した。



 どうしてこんな話になったかな。
 そうだ、俺に唯一教えた攻撃魔法。
 これは誘拐を恐れたから、とカーネルが話し出した。


 誘拐されそうになったら、馬車を破壊しろ。
 閉じ込められてるのに気付いたら、目の前の壁を破壊しろ。
 これは人に対する攻撃魔法じゃない。
 物を撃ち壊す魔法で……とか何とか。



 ごめんな、親父殿。
 もう俺達は人に対して、使っちゃったよ。
 そばかす野郎だけで、他の誰にも使わずに済んでるけど。


 オスカーと一緒に墓場まで持っていく秘密だから。
 話せないけど、ごめんなさい。

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