攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
 特に『こちらのミス』の箇所はすごく小さな声になってた。
 褒められた風な柚希だって、仕方なくこの状況を受け入れたが、本心で納得しているわけではない。



 転生、それは異世界ファンタジーではメインのテーマだ。
 アラサーなのにそんなの読んでるの、と言われそうだが、柚希は筋金入りの投稿小説(異世界ファンタジー)読み専だった。

 そこから書籍化された作品を買うまでになり。
 最近ではお気に入りの作家の戸倉穂波が原作書き下ろしのコミカライズ連載を始めたレディースコミック雑誌まで(本屋の店頭購入が恥ずかしくて)、密林から 毎月自宅配送にして。


 そして挙げ句の果てに、今回のファンミーティングに関西から出陣したのだった。


 そういうファンタジーというか、中世ヨーロッパ的な世界観に未だに惹かれていたのは。
 柚希の地元が国民的歌劇団のお膝元であったことが大きく関係していた、と思う。


 その女性ばかりで構成された歌劇団が主に演目に選ぶのが、中世から近代にかけての欧米を舞台に繰り広げられる切ないロマンスであり、壮大でヒストリカルな物語であったからだ。

 校外学習で観劇をしたこともあるし、地元ではごく普通に歌劇団の生徒さんを、街中や飲食店で見かけることも多い。


 柚希にとって、『それ風な世界観』は、幼い頃からずっと側にあり、その身に染み付いていたのだ。
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