Far away ~いつまでも、君を・・・~
「そう言えば、京香ちゃんとは仲良くしてる?」


「もちろんです。」


「彼女と同じ職場ってどうなの?」


「かつてのクラスメイトってことは、生徒たちも知ってますけど、あとは普通の一同僚として、接してます。」


「フーン、なるほどね。」


「そう言う彩先輩はどうなんですか?同期の遥先輩はもうすぐ結婚だし、そろそろいい人がいても・・・。」


「それ、私に聞く?」


尚輝の言葉を遮るように言った彩は、ため息をつく。


「図らずもブライダル業界に身を置くことになったけど、人のお世話ばかりで、自分のことはさっぱり。皮肉なもんね。」


「・・・。」


「大学時代は弓道を本当に悔いないくらいにやり切って、就職も子供の頃からの憧れの職業に就いて、文句はないんだけど、プライベ-トはさっぱりよ。誰かいい人いない?」


「それこそ俺にそれを言うんですか?俺、彩先輩に振られてるんですよ?俺の立場も、少しは考えて下さいよ。」


「あ、そうだね。ごめん・・・。」


バツ悪そうに謝る彩の顔を見て、尚輝は苦笑いを浮かべるが、表情を改めると


「まだ、斗真先輩のことを忘れられないんですか?」


真っすぐに聞いてみる。その言葉にハッとした表情を浮かべた彩は


「別にそういうわけじゃないんだけど・・・大学時代は部活に追われて、就職してからはなかなか人と同じ生活サイクルにならなくて、とにかく出会いがないんだよ。」


と言い訳がましい言葉を口にする。


「そうですか・・・。でも斗真先輩のことなら、いい加減に吹っ切らないと・・・。」


「だから、それは違うって言ってるでしょ!」


声を荒げた彩に、お互いにびっくりして、言葉を失う2人。気まずい空気が流れる中


「尚輝!」


と呼びかける声が。


「終わった?」


そう言いながら、近付いて来た京香は、恋人の横に、彩の姿を見て、思わず固まる。


「京香ちゃん・・・ご無沙汰。」


慌てて、そう挨拶した彩に、京香はペコリと頭を下げるが、場はまたまた微妙な空気に包まれる。


「じゃ、私はそろそろ。尚輝、今日はありがとう。これからも弓道部とこの花壇のこと、よろしくね。」


場を取り繕うように言った彩に


「先輩、来年も是非来て下さい、お待ちしてます。」


尚輝は呼び掛けるように言う。


「ありがとう。でも、たぶんなかなか難しいだろうな。」


微かに笑いながら、そう答えると、2人に軽い会釈を残して、彩は歩き出して行った。
< 125 / 353 >

この作品をシェア

pagetop